子どもは重さの保存をどう認識していくか
 @三つの操作(可逆,相補,同一)と実験器具(実践例2)
 6月3日 小 4の1   38名
T:釘と同じ重さの粘土の玉を2つ作りましょう。 
      
T:2つの粘土玉の重さをくらべましょう。
C:同じ重さだと思う。
 
  
T:では,粘土2を釘と同じような形にしてみましょう。
  重さはどうなると思いますか。
 

 
 
 
 C7 :
形が違っても重さは同じだと思う。
 C8 :同じように測ったから重さは同じ。
 C9 :まだ測っていないからわからない。
 C8 :だって2つとも釘と同じ重さにした。
 C9 :
形が変わると重さが変わるかも
    しれない。

 

 同一操作の芽生えが見ら れる。


 試行錯誤的段階

形に視点を中心化している。
 

【考察】
 同じ物は同じという同一操作の芽生えが見られるものの「形が違うと重さが変
わるかも知れない」という意見に十分反論できていない。同一操作が不十分の段
階と考えられる。

 C4 :長細い2より丸い1の方が太いから重そう。
 C5 :太いけれど小さい。
 C4 :人間も細い人は軽くて太い人は重い。
 C5 :
身長5cm,幅50cmの人と身長50cm,
    幅5cmの子は同じ重さだと思います。
 C6 :ぼくは兄ちゃんに「でぶ!」といわれ
    ている。
    兄ちゃんは細くて背が高い。
    でも兄ちゃんの方が重い。
C4 :う・・・・・ん。
 

太さに視点を中心化している。


典型的な相補操作

日常生活から例をだし,相補操作の内容を説明している。


 
【考察】
 C6 の児童は操作的段階の児童と考えられる。日常経験を想起した相補操作が
できている。この児童の説明は日常経験をもとに説明しているので大変分かりや
すく児童の納得と支持を得た。また,C6 の児童は内省的段階の児童といえる。
経験や行動を振り返り,自分なりの論理的必然に到達している。しかし,この児
童の説明では,他の児童の納得と支持が得られなかった。それは内省的段階の児
童がほとんどいないからであろう。

C1:丸型の1より長細い2の方が重そう。
  長い方が場所を取る。
C2:場所を取るが細くなった。
C1:
細くなったが長くなった。
C2:・・・・・・
C3:場所を取るとおもくなるんですか。
C1:
場所を取るとさらからはみ出すので重く
  なる。
C3:薬包紙がひいてあるからはみ出しても
  いいんじゃないですか。
 

相補操作ができない。

相補操作の妥当性に関す
る話し合い。


←ピアジエの事例そのも
の。旧教科書の学習内容
でもある。

 
【考察】
 C1の児童は典型的な模索的段階の児童といえよう。細さと太さ,または,長さと高さに対する自分なりの仮説を持って思考活動を行っている。それに対してC2
の児童は模索的段階と操作的段階の中間の段階と考えられる。相補操作の芽生えが見られるものの論理的必然としてとらえ切れていない。
 C3 の児童の投げかけはC1 の児童のその後の活動に大きな影響を与えた。自ら探る活動では粘土を皿からはみ出させて様々に調べている。(模索的な活動)
T:では測ってみましょう。
C:同じだ。形が変わっても重さは変わらない。
T:では、自分で形などを変えて調べてみましょう。
【結果と考察】

内省の段階にある児童: 形が変わっても重さは変わらない。ことだけでな
           く、分割したり、ドーナツ型にしても重さは変わらな
例のA        い、ことまで予想し調べている。

操作の段階にある児童: 形が変わっても重さは変わらないことはとらえて
           いる。しかし、円盤型にしたり、分割したりすると
           軽くなると予想し,実験を進めている。
例のB         この実験を進める中で、重さの保存の認識を深める
           ことができた。

模索の段階にある児童: 全体実験と類似の実験については、保存の認識がで
例のC        きているものの大きく形が異なったり、分割したもの
           についてはできていない。従って、変形させた形など
           について、それぞれ仮説をたてながら探っている。
            この児童の場合は経験の積み重ねとしての知識が身
           についた。と考えられる。

試行錯誤の段階にある児童
         : この児童は、棒型にこだわり、棒を結んだり、曲げた
          りする活動を積み重ねた。それぞれの形についての予想
          は思考の働いたものは認められない。経験の積み重ねに
          よる知識といえる。
 
総合考察
 いかに学習内容に中心化できる実験とはいえ、また、その前の話し合いがどんなに活発で論理的だとしても、そのことをもって全ての児童が認識を深められるものではないことがわかった。一人一人の児童はその認識方法の段階に応じて活動したい内容に方向性があり、それに従って活動し、知識を獲得したり、理解を深めたりしていく。
 学習課題に視点を中心化できる事象提示と実験をもとに、個々の児童の考えで条件設定させて繰り返し実験をさせることが認識を深めていくうえで重要であることがわかった。
 
 
 
 
 

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